五体投地という言葉を聞いたことがありますか?
漢字の通りに祈りの形を表しています。
チベット仏教徒が行う祈りです。
日本の仏教では見かけませんよね。
軽く両方の手のひらを合わせます。
その手を頭の上に掲げ、次に口元に、そして胸元に持って来ます。
それから膝と両手をついて座り、額を床につけます。その後立ち上がります。
これを5回繰り返す祈りの作法です。
お寺に入るとまずこの祈りをして仏様の像や画やタンカに祈りを捧げ
もしそこにお寺の高僧がいらっしゃったら、その方に向かってもう一度祈りを捧げます。
この合わせた両の手はハス花の蕾を表しているそうです。
敬虔な仏教徒は家を出てからずっとこの五体投地の祈りを繰り返して
聖地を目指して行く人もいるそうです。毎日進むのはごく僅かです。
聖地はただでさえ環境厳しい所にあることが多いのですが、厳しい日照りでも雨が降っても雪が降っても
ただただこの祈りを続けて行くだけです。
目的地まで何年もかかることが多いそうです。
なんと過酷で純粋で孤独な信仰でしょうか。
ブータンを旅した時です。
ブータンの旅はほとんどが各地のお寺めぐりです。
毎日毎日、何回も五体投地を繰り返します。
同行した友人が、ブータンの旅は体力勝負、肉体鍛錬でもあったなあ、と言いました。
でも、毎日毎日、無心に五体投地を繰り返しているとだんだん心が静かになって、澄んでくるような気がした。
とも言いました。
信仰の心を助ける祈りの形はほんとうに美しいと思いました。