北インドの村に滞在していたある夜、右目頭に痛みが走りました。
ゴミでも入ったのか、まつ毛でも入ったのか、と思い念の為に持参の目薬を差したものの
翌朝にも回復しておらず、相変わらずゴロゴロしている。
そのうちにまぶたが腫れてきたし、充血もしてきた。
わりと辺境な所なので、眼科という病院はないし、専門の眼科医もいない。
さあどうしたものか、と腫れて垂れて来たまぶたが重たくなるばかり。
困っていたら、毎朝牛乳を分けてくれる家の嫁ウマが「おいで」と連れ出しに来た。
ウマの隣の家に行くそうだ。
どうやら出産して乳児がいるこの家の若い嫁に会いに行くらしい。
チャイを振る舞われておしゃべりしていたら、嫁が帰宅して来て
台所に連れて行かれ、床に敷かれたマットの上に寝るように言われた。
「はい、目をつぶって」
と言われるままに、右目のまぶたを開けられたと思った途端に
目の前に白い肌が見えて、ジュッと甘温かいものが目に入れられた。
母乳だった!
母乳は殺菌する天然の目薬だったのです。
丁度村で母乳が出ているのは一人だけだったし、
男児を生んだ人の母乳はさらに効き目があるという説もあるらしい。
「朝と夕方差すといいのでまたおいで」と言ってもらったので
2日ほど母乳目薬のお世話になり、無事に眼は回復しました。
実に貴重な経験をする事が出来ました。